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第330話「書けない返事」
王城の一室。
中堅の文官が便箋を前に座っている。
地方の同僚から手紙が来た。
王都の状況を教えてくれ、という内容だ。
三週間前に届いた。
まだ返事を書いていない。
書けない、という方が正しい。
何を書けばいいか分からない。
事実を書けばいい。
そう思う。
だが事実が、うまくまとまらない。
退役が増えた。
補給が遅れた。
地方が独自判断を始めた。
ゼル・アークレイドという男が王城前にいる。
百二十日を超えた。
誰も動けていない。
書いてみる。
読み返す。
破る。
また書く。
また破る。
事実を並べるだけなのに、読むと絶望的に見える。
それが現実だとしても。
それをそのまま送っていいのか。
便箋の前で、また止まる。




