第300話「百日目の沈黙」
夜。
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王城前広場。
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風が吹く。
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静かな夜だった。
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そして。
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ゼル。
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まだいる。
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変わらない。
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王城を見る。
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ただ。
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それだけ。
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広場の人々は。
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もう数えなくなっていた。
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何日目か。
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何週間か。
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そんなことはどうでもよかった。
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ただ。
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いる。
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それだけが現実だった。
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一方。
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王城内部。
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会議室。
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「……退役願い」
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「……七十八件です」
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報告が響く。
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誰も驚かない。
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誰も怒らない。
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怒る力も残っていない。
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別の報告。
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「……商業許可証処理」
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「……平均十六日遅延」
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さらに。
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「……王都来訪隊商」
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「……前月比一割減」
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数字が並ぶ。
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静かに。
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確実に。
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王国を削る数字。
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一方。
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最上階。
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ヴァルディスは窓辺に立つ。
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広場。
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ゼル。
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変わらない。
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「……百日か」
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小さな声。
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誰へ向けた言葉でもない。
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短い沈黙。
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「……何もしていない」
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「……だが」
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「……多くが変わった」
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窓の向こう。
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王都は生きている。
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だが。
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王城は少しずつ沈んでいた。
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静かに。
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音もなく。
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確実に。
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