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第292話「二つの王都」
夜。
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王城内部。
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会議室。
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空気は重かった。
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「……退役願い」
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「……六十一件です」
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静かな報告。
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数字は増える。
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さらに。
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「……北門警備隊」
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「……追加欠員二名」
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誰も顔を上げない。
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沈黙だけが続く。
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一方。
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同じ時刻。
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王城前広場。
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酒場は賑わっていた。
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笑い声。
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乾杯の音。
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商談。
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雑談。
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いつもの夜。
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そして。
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ゼル。
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変わらない。
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王都は二つに割れていた。
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崩れていく王城。
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慣れていく市民。
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同じ街。
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同じ夜。
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だが。
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まるで別の世界だった。
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一方。
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最上階。
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ヴァルディスは窓辺に立つ。
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「……面白いな」
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小さな声。
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「……城は沈む」
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「……街は生きる」
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短い沈黙。
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「……どちらが先に限界を迎える」
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近くの騎士は。
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答えられなかった。
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その問いは。
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王国そのものへ向けられていたからだった。
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