第146話「広がる認識」
王都の空気は変わり始めていた。
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まだ静かだ。
まだ重い。
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だが。
以前とは違う。
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恐怖だけではない。
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“理解”が混ざり始めている。
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市場。
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人々は小声で話していた。
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「……子供には手を出さないらしい」
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「……本当なのか?」
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「……戻ってきたんだろ」
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ルークの話。
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もう。
王都全体へ広がっていた。
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噂は速い。
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特に。
恐怖と一緒ならなおさら。
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「……じゃあ」
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「……悪い貴族だけ……?」
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その言葉。
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誰もすぐには返せない。
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怖いからだ。
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だが。
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完全には否定できない。
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実際。
消えているのは貴族ばかり。
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一般人は。
まだ巻き込まれていない。
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下層区の女が小さく呟く。
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「……だったら」
「……なんであんなに怯えてるんだろうね」
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沈黙。
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答えは簡単だった。
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“自分たちが関わっていたから”。
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だが。
誰も口にはしない。
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場面が変わる。
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貴族会館。
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空気は最悪だった。
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誰も落ち着いていない。
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机の上には資料。
地下施設。
過去の記録。
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今さら。
必死に集めている。
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「……接点は」
「……どこまで漏れている」
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上位貴族が聞く。
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「……不明です」
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「……ですが」
「……かなり把握されているかと」
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返事は重い。
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全員。
分かっている。
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隠せていない。
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もう。
遅い。
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「……他に方法は」
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誰かが聞く。
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返事はない。
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長い沈黙。
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そして。
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「……王族へ報告するべきだ」
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その一言で。
空気が変わる。
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皆の顔色が変わる。
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今まで避けていた。
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理由は単純。
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“自分たちだけで処理したかった”。
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地下施設。
裏切り。
全部。
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王族まで広がれば。
責任も広がる。
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だが。
もう限界だった。
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「……王弟殿下へ……」
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その名前。
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口にした瞬間。
空気がさらに重くなる。
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黒幕。
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全員が知っている。
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だが。
誰も逆らえなかった。
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そして今。
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その“本体”へ。
ついに話が届こうとしている。
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一方。
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ルークは部屋に戻っていた。
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窓の外を見る。
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王都。
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変わっている。
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恐怖。
沈黙。
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でも。
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それだけじゃない。
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人々が。
少しずつ考え始めている。
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“誰が悪かったのか”。
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その認識が。
静かに。
街へ広がっていた。




