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第14話 見えない亀裂

―辺境都市・外縁警備線―


「本日の任務は警戒線の再配置だ」


 隊長が地図を広げる。


「昨日の接触を受け、南側を厚くする」


「了解」


 騎士たちが配置につく。


 いつも通りの作業。


 ――のはずだった。


「……隊長」


 中堅の騎士が口を開く。


「この間隔だと、北側が薄くなりすぎませんか」


「問題ない」


「ガルド様の指示だ」


「……ですが」


「副官からは、全体の均等配置を優先と――」


 言葉がぶつかる。


「どっちに合わせる」


 沈黙。


―小さな衝突―


「……ここは南を優先する」


「いや、均等配置の方が事故は防げる」


「どっちが正しいんだよ」


「……ガルド様だろ」


「でも最近、それでズレてる」


 空気が張り詰める。


「……お前」


「ガルド様の判断を疑うのか」


「疑ってるわけじゃない」


「ただ」


「噛み合ってないのは事実だろ」


 沈黙。


―分断―


「……分かった」


「ここは二案でいく」


「南側強化組と均等配置組に分かれる」


「は?」


「それで様子を見る」


 最悪の判断。


 だが誰も止められない。


―結果―


 配置が二つに割れる。


 連携が切れる。


 死角が生まれる。


 ――そして。


「魔獣だ!」


 北側から出現。


「数は少ない!」


「だが……」


「位置が遠い!」


 援護が届かない。


「くそっ……!」


「遅れる!」


 わずかな遅延。


 だがそれで十分だった。


「っ……!」


 一人が倒れる。


「軽傷だ!」


「問題ない!」


 すぐに収まる。


 だが。


―静かな空気―


「……今の」


「完全にズレてたな」


「……ああ」


「どっちの配置が正しかった?」


 誰も答えない。


―騎士団本部・報告―


「軽傷一名」


「任務は達成」


「問題なし」


 形式上は完璧。


 だが。


―ガルド―


「……なぜ分断した」


 低い声。


「指示が曖昧だったため」


「……誰のだ」


 沈黙。


 誰も言わない。


 言えない。


「……」


 ガルドは黙る。


 怒鳴らない。


 だが。


 目が、わずかに冷える。


―ガルドの内心―


「……まとめきれていない」


「俺が?」


 ありえない。


 だが現実は。


「……違う」


 首を振る。


「何かが邪魔している」


 原因を外に求める。


―ゼル側―


「いい」


 ゼルが呟く。


「衝突が起きた」


「はい」


「内部で責任が曖昧なまま」


「不満が蓄積されています」


「次だ」


「もう一段、ズラす」


 静かな声。


「小さな失敗を」


「もう一度起こす」


―締め―


 誰も命令には逆らっていない。


 誰も規律を破っていない。


 だが。


 同じ場所を守っているはずの騎士たちは。


 もう同じ方向を見ていなかった。



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