その7
◇◇◇◇◇◇ その7
そう言われてみどりを見るとひところよりも見違えるように生き生きとしていた。みどりが着ている濃紺の落ち着いた中にも華やかさを併せ持つスーツも高級ブランドであろうことが服には興味がない涼子にもわかった。涼子といえば、ぺらぺらでいかにも安物とわかるグレーのパンツスーツである。
「この浅野和子さんは、フォーチュンで知り合って私達のシステムの優秀性を理解し、参加してくれた一人よ。」
みどりは和子をちらっと見た。みどりが和子をみる目つきは上司が部下を見るのと同じだと涼子は思った。
#浅野 和子
「涼子、私これから仕事で人に会う約束になってるんだ。私から呼び出したのにごめんね。細かい話しは和子さんから聞いてね。あなたならきっと気に入ってくれると思うわ。」
みどりは話し終えると伝票を持って一人だけ立ち上がり、
「ライフはSNSを120%活かしたシステムよ。始めれば涼子にも今以上のすばらしい人生が待ってるよ。」
みどりは涼子に声をかけて颯爽とボンを出て行った。その後ろ姿にかつてのみどりの姿はどこにも見出せなかった。
みどりが去った後、涼子と和子の間には見知らぬ者同士特有の気まずさが残った。和子はみどりほど洗練されてはいなかったが、着ているスーツは有名ブランドの上等のものであることはファッションにうとい涼子にもわかった。
「あの、」
最初に口火を切ったのは和子である。
「うさぎさんですよね。」
涼子はいきなりハンドルで呼ばれてびっくりした。
「そうだけど。そうか、フォーチュンでみどりと知り合ったんだもんね。」
共通の話題が見つかって二人の間にはほっとした雰囲気が醸し出された。
「うさぎさん、いえ、涼子さんの発言にはいつもどきどきさせられています。」
「ありがとう、あなたもしかして”かーこ”さんじゃない?。」
涼子が参加している会議室でたまに見かけるハンドルをあてずっぽうに言った。
「そうです、私の発言も見てくれている人がいたんですね。感激です。」
無邪気に喜んでいる和子に涼子は好感を持ちはじめていた。
「ところで、あなたがたの商売ってどんなシステムになっているの。」
涼子はさっそくに尋ねた。