その5
◇◇◇◇◇◇ その5
「みどりって山城さんのことかい。珍しいな、最近はあまり会ってなかったんじゃないのか。」
「フォーチュンでメッセージのやりとりは続けていたのよ。」
「へえ、まめだねえ。」
何事も長続きしない健一は感心した。
「それがね、お小遣いを稼がせてくれるらしいんだ。」
健一の反対を誘わないように涼子はわざと明るく切り出した。
「おいしい話しには裏がある、って言っているのは涼子じゃないか。」
探るような涼子の話し方ではあったが、健一は、
「何かの参考になるかもしれないから、行ってもいいかな。」
「まあ、涼子のすることには間違いがないと思うから、面白いネタがあったら教えてくれよな。」
#喫茶ボンにて ライフ
涼子が諏訪中央IC近くの喫茶店「ボン」に到着したのは約束の七時少し前であった。店に入り、席を探している時、
「涼子、ここよ。」
とみどりが手を振って教えてくれた。一人だと思っていたのに女性の連れが一緒である。
「久しぶりね、元気だった?。」
涼子がみどりに会うのは半年ぶりである。濃紺のビジネススーツにタイトスカートがよく似合っている。襟元にフリルがあしらわれた純白のブラウスもみどりにぴったりだ。
「うん、丈夫だけが私の取り柄だもの。涼子のほうこそ元気だった?。」
「おかげさまで、私は大丈夫だよ。」
同伴の女性を見るとみどりと涼子の会話を熱心に聞いている。涼子はこの女性が気になってみどりに尋ねた。
「ねえ、みどり、そちらの方は?。」
言われてみどりは隣の女性と顔を見合わせた。
「ごめん、ごめん、紹介するわ。」
その女性はみどりに促されて立ち上がった。
「こちら、浅野和子さん、今ね、この人と一緒に事業をやってるの。」
「はじめまして、浅野です。山城さんにはいつもお世話になっています。今日は勉強のつもりで来ました。よろしくお願いします。」
和子は深々と頭を下げると名刺を差し出した。和子はみどりと同じようなビジネススーツにパンツを組み合わせており、活発な印象を与える。




