近江の海 しづく白玉 知らずして
近江の海 しづく白玉 知らずして 恋せしよりは 今こそ増され
(巻11-2445)
白玉を 巻きて持ちたり 今よりは わが玉にせむ 知れる時だに
(巻11-2446)
白玉を 手に巻きしより 忘れじと 思ひけらくに なにか終はらむ
(巻11-2447)
白玉の 間けつつ 貫ける緒も くくり寄すれば のちも会ふものを
(巻11-2448)
白玉(女性)に寄せる恋歌四首の構成になっている。
近江の海に沈んでいる白玉のように、お逢いしないままで恋していた時よりは、お逢いした今のほうが、より恋心が増しているのです。
ついに白玉を手に巻き持つことになりました。今からこの玉は私だけの白玉なのです。こうしてお逢いしている時はなおさらのことです。
(親の目を忍んで、逢瀬を遂げ、共寝をしている状態なので、少し不安らしい)
白玉を手に巻いた時からというもの、絶対に忘れないと思う、どうしてその思いが終わることがあるだろか。
白玉と白玉の間を通した緒であっても、たぐりよせれば、やがては会うと言われているのです。
(共寝した今でも、親の了承が得られていないのか、次の逢瀬に不安を感じている)
念願の逢瀬、共寝をしても、理由は不明ながら、簡単には正式な夫と認められないようだ。
この四首は、逢瀬と共寝の喜びと、自分の決意にも関わらず、娘の親の了承が得られない不安やもどかしさを詠む。
「少し弱腰か」と感じるけれど、その微妙な心理はわからないでもない。




