宇治川の 瀬々のしき波 しくしくに
宇治川の 瀬々のしき波 しくしくに 妹は心に 乗りにけるかも
(巻11-2427)
ちはやびと 宇治の渡りの 早き瀬に 逢はずこそあれ 後は我が妻
(巻11-2428)
はしきやし 逢はぬ子ゆゑに いたづらに 宇治川の瀬に 裳裾ぬらしつ
(巻11-2429)
宇治川の 水沫さかまき 行く水の 事かへらずぞ 思ひそめてし
(巻11-2430)
宇治川の瀬ごとに寄せる波のように、あの愛しい女性が私の心に乗りかかってきてくるのです。
宇治の渡し場の瀬が速いので、逢えないでいるけれど、あの愛しい女性はいずれは私の妻になるのです。
何ということだろうか、逢ってくれない、あの女性のおかげて、何もできずに宇治川の瀬で、裳を濡らし続けているのです。
宇治川の水の泡が逆巻いて流れて戻らないように、あの女性のことを深く思い染めてしまったのです。
源氏物語の薫の大君に対する想い、そのもののような四首。
紫式部も、おそらく意識にある。




