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恋ひ死なば 恋ひも死ぬとや 玉鉾の
正述心緒
※正述心緒:物に寄せずに、直接思いを述べた歌、寄物陳思とともに、表現手法による命名。どちらも柿本人麻呂が名付けたと言われている。
恋ひ死なば 恋ひも死ぬとや 玉鉾の 道行く人の 言も告らなく
(巻11-2370)
※言も告らなく:夕占は、通り過ぎる人たちの言葉から、吉凶を占う。その結果、想い人が来ないと判断していり。
※玉鉾の:道に掛かる枕詞。
恋死にするなら、恋死にしてしまえとでも言うのですか?
道を行く人の口からは、あなたが訪れてくれるような言葉も兆しも、全く出て来ないのですから。
「恋ひ死なば 恋ひも死ぬとや」
待ち続けても、あてにならない男を、激しい言葉で恨む。
それだけ、思いが深く、心の底からの叫びのような歌。




