760/1385
はなはだも 夜ふけてな行き 道の辺の
はなはだも 夜ふけてな行き 道の辺の ゆ笹に上に 霜の降る夜を
(巻10-2336)
※な行き:「な」は禁止の意味。「な行き」は「行ってはいけません」の意味。
※ゆ笹:笹の美称。
こんな夜更けに家を出て行ってはいけません。
道のほとりの笹には、霜が降りているほどの、寒い夜なのですから。
当時は通い婚だった。
男は、夜明け前に女の家から、出ていくのが決まり。
しかし、外はまだ暗く、道のほとりの笹には冷たい霜が降りている。
送り出す立場の女は、男の寒さや辛さを案じて、引き留めようとする。
男も、引き留められて、さぞかし女の愛情を感じたと思う。
この時代ならではの男女の実感をあらわす名歌と思う。




