夕されば 衣手寒し 高松の
夕されば 衣手寒し 高松の 山の木ごとに 雪そ降りたる
(巻10-2319)
我が袖に 降りつる雪も 流れ行きて 妹が手本に い行き触れぬか
(巻10-2320)
沫雪は 今日はな降りそ 白たへの 袖まき乾さむ 人もあらなくに
(巻10-2321)
夕方にもなり、袖口に寒さを感じました。高松の山を見ると、全ての木に雪が降り積もっておりました。
私の袖に振って来る雪も、そのまま流れて、あの子の手に触れてもらえないだろうか。
泡雪は、今日は降らないで欲しいのです。袖を枕にして乾かしてくれる人がいないのですから。
袖と雪の歌を三首並べてみた。
夕方になり、袖口に寒さを感じて山を見ると、木々に雪が降り積もっている。
そして、雪は自分の袖にも降って来た。
同じ雪が彼女にも降って欲しい、つまり同じ経験をして、次に逢った時の話題にでもしたいと思う。
ただ、それほど多くは降って欲しくない。
袖を枕に乾かすような共寝も出来ないのだから。
古代において、室内暖房は囲炉裏程度。
だから、現代とは比較にならないほど寒い。
結局、共寝をして、人肌で温め合うしかない。
それを考えると、共寝ができないと、本当に寒く辛かったと思う。




