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こほろぎの 待ち喜ぶる 秋の夜を
こほろぎの 待ち喜ぶる 秋の夜を 寝る験なし 枕と我は
(巻10-2264)
コオロギにとっては、待った相手が来て喜び、うれしそうに鳴く夜ではあるけれど、この私と枕にとっては、全く寝る喜びがないのです。
コオロギは逢瀬でもしているのか、美しい声で賑やかに鳴く秋の夜だけれど、自分は独り寝なので全く面白くない、そんな寂しさを詠む。
コオロギはコオロギの勝手で鳴いているだけであって、コオロギに文句を言っても仕方ない。
コオロギから、大きなお世話とでも言われるかもしれない。




