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秋山の したひが下に 鳴く鳥の
秋山の したひが下に 鳴く鳥の 声だに聞かば 何か嘆かむ
(巻10-2239)
※したひが下に:「したひ」赤く色づくこと。紅葉。
秋の山の美しい紅葉に隠れて鳴く鳥の声が聞こえるように、せめてあの人の声だけでも聞くことができるなら、何を嘆くことがあるでしょうか。
柿本人麻呂歌集の歌。
想像するに、紅に染めた衣を着た憧れの美しい女性がいて、理由は不明ながら思いが通じる可能性がない。
だから、せめて声だけでもいいから、かけてもらいたい。
そうすれば、この辛い思いはなくなると思っている。
ただ、声をかけられても、そのために、かえって思いが強まる可能性もある。
そんな揺れ動く心理を詠んだ恋の歌と解釈した。




