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九月の しぐれの雨に 濡れ通り
九月の しぐれの雨に 濡れ通り 春日の山は 色づきにけり
(巻10-2180)
※しぐれの雨:晩秋から初冬にかけての通り雨。
雁が音の 寒き朝明けの 露ならし 春日の山を もみたすものは
(巻10-2181)
※もみたす:黄葉させる。
このころの 暁露に 我がやどの 萩の下葉は 色づきにけり
(巻10-2182)
九月の時雨にたっぷりと濡れ、春日の山は美しく色づいております。
雁の声が聞こえるような寒い明け方の露が原因であるようです。
春日山を美しく黄葉させるのは。
このごろの明け方の露にしっかりと濡れて、我が家の萩の下葉も、すっかり色づいてきました。
特に、(巻10-2180)は、名歌と思う。
時雨の激しさ、それが黄葉に染みて、ますます色を深めさせ、春日山全体を美しくさせる。
時雨の潤いや、音の響きまで聞こえて来るような感覚まで起こさせる。
現代語ではなく、歌そのものを何度も口に出して詠んだほうが、実感が高まる。




