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妻隠る 矢野の神山 露霜に
妻隠る 矢野の神山 露霜に にほひそめたり 散らまく惜しも
(巻10-2178)
※妻隠る:矢野の枕詞、「矢」に同音の「屋」の意味を込める。
※矢野の神山:矢野は所在未詳。神山は神として祀る山
朝露に にほひそめたる 秋山に しぐれな降りそ ありわたるがね
(巻10-2179)
右の二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。
矢野の神山が露が降りて、美しく紅葉しております。
この先、散ってしまうのが、実に惜しまれます。
朝露が降りて、美しく紅葉をはじめた秋の山に、しぐれは降らないで欲しいのです。
この素晴らしさが、いつまでも続くように。
技巧がなく、シンプルなわかりやすい歌。
紅葉を愛でる宴会で、あえて、わかりやすい歌を詠んだと思う。




