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秋田刈る 仮廬を作り 我が居れば
秋田刈る 仮廬を作り 我が居れば 衣手寒く 露そ置きける
(巻10-2174)
※秋田刈る仮廬:稲刈り作業中に、田のそばに作る仮小屋。ススキで屋根をふくなどの簡素な造り。
稲刈りのための仮小屋を作ってその中にいると、袖に寒さを感じたので、
袖を見ると、露で湿っておりました。
シンプルであるけれど、稲刈り中の実感がこめられた歌と思う。
現代では機械で刈り取るのが主流で、仮小屋など、作らない。
しかし、古代の稲刈りでは、それに従事した人が、ほとんど覚えた感覚。
遠い祖先たちの実感に、この歌を通じて、少しだけ近づいたような気がする。
尚、この歌は、百人一首の巻頭歌、天智天皇御製として伝えられている
秋の田の 仮廬の廬の 苫を荒み 我が衣手は 露に濡れつつ
との関連性も指摘されている。




