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我が恋を 夫は知れるを 行く船の
我が恋を 夫は知れるを 行く船の 過ぎて来べしや 事を告げなむ
(巻10-1998)
私が恋しいと思う心を、あの方もわかっているはずなのに、行く船が通り過ぎるようなことがあってもよいのでしょうか、何のお言葉もないのに。
織姫のすぐにでも逢いたいと焦る気持ちを表現している。
天の川を行く船は、他にもあって、通り過ぎてしまった船に、彦星は乗っていなかったのかもしれない。
しかし、逢いたくて焦る織姫は、何の言葉もない、と嘆いてしまう。
また、別の解釈では、愛する夫が別の女の家に行ってしまった。
自分には何も言わずに、通り過ぎた、それを恨み悲しむというもの。
ただ、織姫と彦星の年に一度だけの逢瀬、たまたま彦星が乗っていなかった船が通り過ぎただけで、その後に幸せな逢瀬を果たしたと思うほうが、詩情は高まると思う。




