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夏草の 露分け衣 着けなくに
夏草の 露分け衣 着けなくに 我が衣手の 乾る時もなき
(巻10-1994)
夏草の露を踏み分けながら濡れてしまった衣を着たわけでもないのに、私の衣の袖は乾く時がないのです。
恋から来る嘆きの涙で、衣の袖が乾かないのだろうか。
夏草の露を踏み分けて濡れた衣を着ないのだから、通わなくなった男を待つ女が詠んだと考える説。
あるいは、何らかの別れの事情が発生して、女の家に通えなくなった男が詠んだと考える説がある。
ただ、衣の袖で涙を拭うのだから、女性のしぐさであって、女性が詠んだと考えるほうが自然と思われる。




