673/1385
隠りのみ 恋ふれば苦し なでしこが
隠りのみ 恋ふれば苦し なでしこが 花に咲き出よ 朝な朝見む
(巻10-1992)
世間には隠れて心の中だけで、恋しているので苦しくてたまりません。
なでしこの花が開くように、しっかりと貴方のお気持ちを示してください。
そうすれば、毎朝、ご一緒できるのですから。
隠しているだけの関係に耐えられなくなった女性が、健気に気持ちを訴える。
尚、この歌は「よみびとしらず」であるけれど、似たような歌が、大伴家持と笠女郎にある。
本当に「よみびとしらず」だったのか、あるいは何らかの事情でそうしたのかは、今となってはわかりようがない。
(巻3-408)大伴家持
なでしこが その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日なけむ
(巻8-1616)笠女郎
朝ごとに 我が見るやどの なでしこの 花にも君は ありこせぬかも




