660/1385
見渡せば 向かひの野辺の なでしこが
見渡せば 向かひの野辺の なでしこが 散らまく惜しも 雨な降りそね
(巻10-1970)
向こうに見える野辺のなでしこに目をやると、散ってしまうのが惜しい程に美しい。
だから、雨は降らないで欲しいのです。
なでしこが、雨で散るかどうかは不明。
そうなると、この歌のなでしこは、「向こうの家の美しい乙女」で、「雨」が散らせようとする「恋敵」か。
確かに、近くで育って来て、美しく成長した乙女を恋しながら、他の男に取られるなど、とても認められない話なのかもしれない。




