659/1385
我がやどの 花橘は 散りにけり
我がやどの 花橘は 散りにけり 悔しき時に 逢へる君かも
(巻10-1969)
我が家の庭の橘の花は、ご覧の通り、散ってしまいました。
こんな実に残念な時に、貴方様とお逢いすることになるとは。
せっかくお越しになられたのに、時期が遅く、橘の花は散ってしまった。
橘の花が散ってしまったことは、実は自分の容色の衰えを意味する。
若い頃の、せめて見せられる時期にお逢いしたかった、と残念な気持ちを述べる。
訪ねて来た男が昔馴染みか、あるいは若い美男子か。
昔馴染みであれば、皮肉で「遅いわよ、貴方」。
若い美男子であれば、単なるからかいで、「こんなおばさんに?」。
などと考えると、面白いかもしれない。




