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黙もあらむ 時も鳴かなむ ひぐらしの
黙もあらむ 時も鳴かなむ ひぐらしの 物思ふ時に 鳴きつつもとな
(巻10-1964)
※黙もあらむ:特に不安などの問題が無く、平静な状態。
もっと気楽な時にこそ鳴いて欲しい。
それなのに、あのヒグラシは、これほど物思いに沈んでいる時に、わざわざ寂しげな声で鳴き続けるのだから。
要するに、いろいろ悩んでいる時に、ヒグラシが寂し気な声で鳴き続けるのが、耳障りと、詠む。
「物思ふ時」は、夕暮れ時で、女が男の訪れを待つ時との説もある。
ただ、当のヒグラシにしてみれば、大きなお世話なのだけど。




