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我が背子に 恋ひてすべなみ 春雨の
我が背子に 恋ひてすべなみ 春雨の 降る別き知らず 出でて来しかも
(巻10-1915)
※春雨:万葉集での春雨は、降りやまない雨。
あなたへの恋心がどうしようもなくて、春雨が降っていても、そんな分別もなくて家を出て来てしまいました。
珍しい女性の積極的な歌。
春雨であろうと、雨に濡れることを厭わずに家を出て、しかも通い婚の時代に、女性が押し掛けるのだから。
さて、押し掛けられてしまうと、男は実に弱い。
その上、降り続く春雨なので、受け入れるしかない。
「あなたが来ないから私が来たの、はっきりしてよ」などと責められ、そのまま尻に引かれて・・・そんな男女が見えて来る。




