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春の野に 霞たなびき 咲く花の
春の野に 霞たなびき 咲く花の かくなるまでに 逢はぬ君かも
(巻10-1902)
春の野に霞がたなびいて、花もこれほどまでに咲く時期になっても、貴方はお逢いしてくれないのですね。
疎遠になったとしても、春の野にはふんわりと霞はたなびき、花は美しくあちらこちらで咲く。
しかし、疎遠は疎遠のまま。
どれほど恋い焦がれていても、逢う兆しもない。
おそらく自分以上の恋人が相手にできている、それを知っているから、自分からも声をかけられない。
かくして、ひとり寂しい春を過ごすけれど、それは自分の魅力が劣っているため。
なかなか辛いことではあるけれど、それを現実として受け入れている。




