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春雨に ありけるものを 立ち隠り
春雨に ありけるものを 立ち隠り 妹が家道に この日暮らしつ
(巻10-1877)
春雨程度ではあったけれど、途中で雨宿りをしてしまって、妻の家には行かず、今日一日を無駄に過ごしてしまった。
何とも事情が不明な歌。
春雨程度なら、素直に妻の家に行けばいいものを、途中で雨宿りして、それも一日雨宿りなど、ありえるのか。
相当、ものぐさな男か、あるいは妻と喧嘩していて行きづらかったのか。
それとも、途中に悪友がいて、そこで飲んでしまったのか。
悪友なら、まだましかもしれない。
妻の家には行かずに、途中にあった妾の家で過ごしてしまったのか。
万葉集には、時折、こんな微妙な歌があり、それがまた面白い。




