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朝霞 春日の暮れば 木の間より
朝霞 春日の暮れば 木の間より 移ろふ月を 何時かと待たむ
(巻10-1876)
朝霞からの春の長い一日が暮れれば、木々の間を伝わる月が何時見えるのかと、待つことになるのです。
この歌には、徒然草第137段の「月はくまなきをのみ見るものかは」に繋がるとする解釈がある。
つまり、はっきりと見える満月だけが素晴らしいのではなく、木の間から見えるか見えないかのような、不完全な美も素晴らしいとの意味。
しかし、春の長い一日を過ごして、木の間に動く名月を懸命に待つものだろうか。
この場合の「月」は、おそらく「浮気な男君」。
あちこちの木(女君)をさまよい歩く月(男君)は、いつ自分のところに来るのかと待ちわびる歌ではないかと解釈する。




