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児らが手を 巻向山に 春されば
児らが手を 巻向山に 春されば 木の葉しのぎて 霞たなびく
柿本人麻呂(巻10-1815)
巻向山に春が来たので、木の葉に覆いかぶさるように、霞がたなびいております。
「児らが手を」は、巻向山にかかる枕詞。
愛らしく恋する人の手を巻く、つまり枕にするとの意味。
単純な情景描写ではなくて、「児らが手を」を使っている以上、付近に住む恋人を意識したと思われる。
また、山に春霞がたなびく様子は、どちらかと言えば、ぼんやりとしたもの。
そのぼんやりに、「児らが手を」を序詞にすることによって、少しドキドキさせるようなうれしさを、感じさせることになる。




