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巻向の 檜原に立てる 春霞
巻向の 檜原に立てる 春霞 凡に思はば なづみ来めやも
(巻10-1813)
柿本人麻呂
巻向の檜原に立つ春霞のような、そんなおぼろげな思いなら、これほど苦労をして通って来ることなどは、ないのです。
巻向は三輪山の東北にあたり、奈良から桜井・明日香方面に向かう上つ道や山の辺の道から東に入ったところ。
諸国へ直接通じる道付近ではなく、おそらく人麻呂が懇意にしていた女性の家(隠し妻の可能性もある)があったと言われている。
飛鳥浄御原で一日の勤務を終えた人麻呂は、夕方に宮、あるいは家を出た。
その後は、山田の道を北進。桜井市から山の辺の道に出て、三輪の山裾をまわり、巻向まで約10キロの道を通ったとの研究があり、なかなか興味深い。




