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武蔵の小崎の沼の鴨を見て作りし歌一首
武蔵の小崎の沼の鴨を見て作りし歌一首
埼玉の 小崎の沼に 鴨ぞ羽霧る おのが尾に 降り置ける霜を 掃ふとにあらし
(巻9-1744)
※武蔵の小崎:武蔵国埼玉郡埼玉。現代の埼玉県行田市埼玉付近の沼。田園の中に小崎沼の碑が立っている。
埼玉の小崎の沼にいる鴨が羽ばたきをして、しぶきを散らしている。
自分の尾に降りた霜を掃い除けようとしているのだろう。
これも高橋虫麻呂の作。
シンプルな自然観察の歌になる。
古代の埼玉の広々とした風景。
霜の降りるような寒い時に沼にいる鴨が、霜の冷たさを懸命に羽ばたきをして掃う。
古代のバードウォッチングか。
何でもない場面にはなるけれど、不思議に興味を惹かれるような作品と思う。




