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舎人皇子に献りし歌二首
舎人皇子に献りし歌二首
ふさ手折り 多武の山霧 繁みかも 細川の瀬に 波の騒ける
(巻9-1704)
冬こもり 春へを恋ひて 植ゑし木の 実になる時を 片待つ我ぞ
(巻9-1705)
※舎人皇子:天武天皇の第六皇子。
※ふさ手折り:多武(たむ:たわむ)の枕言葉と判断。
※細川:多武峰から出て、島庄(明日香村)で飛鳥川に合流する川。
※冬ごもり:春の枕詞。
木々の枝がたわむほどに、多武峰の山霧が深い。そのためなのだろうか、細川の瀬に波が立ち騒いでいる。
春を待ちこがれて植えた木に、実がなる時を、ただひたすら私は待っています。
前の歌は、世間の噂が激しいので、恋の行方も深い霧の中。
次の歌は、婚約者の娘の成長を、ひたすら待つ歌と、理解した。




