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高山の 菅の葉しのぎ 降る雪の
三国真人人足の歌一首
高山の 菅の葉しのぎ 降る雪の 消ぬとか言はも 恋の繁けく
(巻8-1655)
※三国真人人足:伝未詳。慶雲二年(705)十二月正六位より従五位下。養老四年(720)正五位下。歌はこの一首のみ。
高山の菅の葉を押しなびかせて降る雪もいつかは消えると言うけれど、私の恋心の激しさも、同じように消し去ってしまいたい。
「高山の 菅の葉しのぎ 降る雪」は、現代日本人の生活実感として、ほぼ意識の外なので、想像で情景を思い浮かべるしかない。
要するに、どんなに強く降る雪でも、やがては消えるのだから、自分の激しく苦しい恋心も消え去ってしまいたい(消し去ってしまいたい)、そんな思いだろうか。
ただ、それが簡単ではないことも自覚しての歌には違いがない。




