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沫雪の ほどろほどろに 降りしけば
太宰師大伴卿の、冬の日に雪を見て、京を憶ひし歌一首
沫雪の ほどろほどろに 降りしかば 奈良の都し 思ほゆるかも
(巻8-1639)
※ほどろほどろに:「ほどろ」は「はだら(まばら)」に近い言葉。
沫雪が はらはらと降り続くと、奈良の都を思い出してしまって仕方がない。
旅人卿は、沫雪の降り方、積もり方に何を見たのか。
亡き妻と一緒に、かつては奈良の都で沫雪を見たのだろうか。
遥か遠い大宰府の地から、本当は奈良の都に戻りたい。
できれば、妻も生き返ってもらって、一緒に奈良の都で、美しい沫雪を見たい。
しかし、そんなことは、叶うわけがない。
いろいろ考えると、淡泊ではあるけれど、味わいの深い歌。




