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高円の 秋野の上の なでしこが花
丹生女王の、大宰帥大伴卿に贈りし歌一首
高円の 秋野の上の なでしこが花 うら若み 人のかざしし なでしこが花
※丹生女王:伝未詳。太宰帥大伴旅人の若い時からの愛人と推定されている。
高円の秋野のあちこちに、なでしこの花が咲いています。
本当に初々しくて、かつて貴方が髪に挿して愛でてくれたなでしこの花を思い出します。
大伴旅人は大宰府に着任後、早々に妻を亡くしている。
この歌は、古くからの愛人丹生女王が、その気持ちを慰めようと思って贈ったのだろうか。
お互いに、それなりの年になっていたと思うけれど、若いころの甘い思い出を歌に込め、「旅人さん、少しでも元気を出して欲しい」、そんな女心を感じさせる名歌と思う。




