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宇陀の野の 秋萩しのぎ 鳴く鹿も
丹比真人の歌一首 名欠く
宇陀の野の 秋萩しのぎ 鳴く鹿も 妻に恋ふらく 我にはまさじ
(巻8-1609)
※丹比真人:万葉集編纂時から不明、名を記せない事情があったのかも不明。
※宇陀の野:奈良県宇陀郡大宇陀町安騎野の一帯。
作者丹比真人の名は、万葉集編纂時から不明、あるいは名を記せない事情があったのかは不明。
※宇陀市榛原あかね台わかくさ公園に、この歌の歌碑が設置されている。
宇陀の野に咲く萩の花を押し伏せて鳴く鹿も、妻に恋い焦がれる私の寂しい心には及ばないのです。
単純な歌ではあるけれど、最後の「我にはまさじ」が、実に強い。
そのため、万葉集編者が見捨てられない歌となったと思われる。




