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秋の雨に 濡れつつ居れば いやしけど
大伴利上の歌一首
秋の雨に 濡れつつ居れば いやしけど 我妹がやどし 思ほゆるかも
(巻8-1573)
※大伴利上:伝未詳。歌はこの一首のみ。
冷たい秋の雨に濡れ続けていると、貧しくてみすぼらしい家ではあるけれど、妻が待つ家が恋しくてならないのです。
男は強いようで、弱いもの。
冷たい雨に打たれ続ければ、濡れた衣を通して、体は冷え切り寒くて仕方がない。
通う妻の家が、貧しかろうが、みすぼらしかろうが、そんなことはどうでもいい。
いつもの通り、愛情たっぷりに迎えてもらって、濡れた衣を乾かして欲しい。
冷え切った身体を、その柔肌で温めて欲しい。
男の我がままと言えば、そうなるけれど、この切実な気持ちは、よく理解できる。




