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山上臣憶良の七夕の歌(6)
彦星の 妻迎へ舟 漕ぎ出らし 天の川原に 霧の立てるは
(巻8-1528)
霞立つ 天の川原に 君待つと い行き帰るに 裳の裾濡れぬ
(巻8-1529)
天の川 浮津の波音 騒くなり 我が待つ君し 舟出すらしも
(巻8-1530)
彦星が妻を迎えに行く舟が、今漕ぎ出したようです。
天の川原に波が立っているのですから。
霞がかかる天の川の川原で、あのお方を待ちあぐんで、行ったり来たりしているので、とうとう裳の裾が、すっかり濡れてしまいました。
天の川の浮津の波音が、大きくなりました。とうとう、私の待つあのお方が、舟出をなさるようです。
一首目が、七夕の空を見る人間の立場、二首目と三種目が牽牛を待つ織姫の立場で詠んでいる。
いずれにせよ、一年の長い別離の期間を経て、牽牛と織姫が出会う、その直前の気持ちの高まりを、詩情豊かに詠んでいる。




