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山上臣憶良の七夕の歌(4)
風雲は 二つの岸に 通へども 我が遠妻の 言そ通はぬ
(巻8-1521)
たぶてにも 投げ越しつべき 天の川 隔てればかも あまたすべなき
(巻8-1522)
右は、天平元年七月七日の夜に、憶良の天河を仰ぎ観しものなり
風も雲も天の川の両岸を自由に行き来するけれど、私の遠くにいる妻の言葉など何も通って来ないのです。
本当は小石を投げても向こう岸に届きそうな狭い天の川なのに、しっかりと二人の間を隔てているので、全くどうしようもないのです。
天の川による二人の関係の強い隔てと、その嘆きを詠う。
「遠くにいる妻」は距離的に遠いのではなく、近くにいても手が届かない妻。
遠距離恋愛、遠距離ではないけれど逢瀬に障害がある恋愛。
どちらも、辛い恋には変わりがない。




