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隠りのみ 居ればいぶせみ 慰むと隠りのみ 居ればいぶせみ 慰むと
大伴家持の晩蝉の歌一首
隠りのみ 居ればいぶせみ 慰むと 出で立ち聞けば 来鳴くひぐらし
(巻8-1479)
屋敷に引き籠りがちになってしまい、気が滅入ってしまった。
少しでも気晴らしと思って、屋敷から出ると、もうひぐらしが来て鳴いている。
「夏の雑歌」に含まれている歌なので、夕暮れの蝉のこと。
引き籠った事情はわからない。
暑い夏で体調を崩したのかもしれない。
ひぐらしのせつない鳴き声が、家持の弱った心身に、何らかの慰めを与えたことは、間違いがない。
現代に住む人々も、共感することができるような名歌と思う。




