なにしかも ここだく恋ふる ほととぎす
大伴坂上郎女の霍公鳥の歌一首
なにしかも ここだく恋ふる ほととぎす 鳴く声聞けば 恋こそまされ
(巻8-1475)
どうしてこれほどまでに、私は恋い焦がれてしまうのでしょうか。
ホトトギスの鳴く声を聞くと、人恋しさがつのって、苦しみが増すというのに。
ホトトギスは万葉集で150首以上と野鳥の中で最も多く詠われている。
他の夏鳥は、年によって春に渡来する日がずれる事がよくあるけれど、ホトトギスなどのカッコウの仲間は渡来する日が大きくずれない。
毎年正確な時期にやってくることから、例えばホトトギスの渡来は、田植えの合図とされていた。
万葉人に詠われたホトトギスは平安時代の古今集、新古今和歌集にも受け継がれ、
四季を代表する詠題となった。
そして、ホトトギスのことを一通り知らないものは歌人の資格なしとまで
言われるくらい重要な季語になった。
また、ホトトギスはどういうわけか、男女の恋と結びついた。
そのため、ホトトギスを詠った歌には、恋の思いを重ね合わせた歌が多い。
ホトトギスが到来する時が正確、それにかこつけて、自分の恋慕う人にも、ホトトギスと同じように、時を誤らずに来て欲しいと思うのだろうか。




