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恋しけば 形見にせむと 我がやどに
山辺宿祢赤人の歌一首
恋しけば 形見にせむと 我がやどに 植ゑし藤波 今咲きにけり
(巻8-1471)
とても恋しい時に、あの人の形見にしようと我が家の庭に植えた藤の花が、今ついに咲きました。
おそらく、何らかの辛い別れとなった人の形見として、自分の家の庭に藤を植えた。
そして、恋人に逢えず恋しく思っている今、予期したとおりに藤の花は見事に咲き、恋人の「形見」となった。
逢えない恋人への切ない思いが藤の花の美しさと、その香りの中に漂っている。




