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雨に寄せき
ひさかたの 雨には着ぬを 怪しくも 我が衣手は 干る時なきか
(巻7-1371)
雨の中で着ているわけでもないのに、どうしたことか、私の衣の袖は濡れてしまって乾く時がないのです。
愛する男に逢いたくて仕方がない。
しかし、なかなか逢えない、通って来ない。
雨に濡れたわけでもないのに、どうしたことか、衣が濡れているし、乾く時がないほど、いつも濡れている。
「雨に寄せき「」との歌ながら、袖を濡らしているのは、女の涙。
「どうしたことか」と問いかけながら、詠んだ本人は理由をしっかりわかっている。




