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衣に寄せき(1)
つるはみの 衣は人皆 事なしと 言ひし時より 着欲しく思ほゆ
(巻7-1311)
※つるはみ:くぬぎ。ブナ科の落葉高木。その実を煎じた汁に鉄を加え、紺黒または黒色に染める。衣服令においては「家人と奴婢は、つるはみ墨の衣」とある。
ただし、階級の上下を問わず、奈良時代の人々の日常衣だったとの説もある。
つるはみの衣は、世間の誰もが着やすいとの話を聞いた時から、着てみたいと思っていた。
身分も高く気位も高い女(おそらく妻か?)では癒されない男が、身分は劣るが親しみやすい女に興味を持ったようだ。
いつの世も世間は世知辛い、家に帰っても気位の高い女に苛められるよりは、気安い女を求めてしまうのも、男の性なのかもしれない。
 




