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木に寄せき(1)
天雲の たなびく山の 隠もりたる 我が下心 木の葉知るらむ
(巻7-1304)
天雲がたなびくほどの高い山に隠した私の本当の気持は、木の葉だけが知っているのです。
私の本当の気持は、恋心。
天雲がたなびくほどの高い山に隠すのだから、届かず、かなわぬ恋、秘めなければならない恋なのだと思う。
身分差が大きな恋も想定できる。
そして、その恋心は、木の葉だけが知っている。
樹木は、人の心を察知するという信仰があった。
「私なんかじゃ無理かなあ」
可憐な少女がため息をつくような、名歌と思う。




