407/1385
遠くありて 雲居に見ゆる
行路
遠くありて 雲居に見ゆる 妹が家に 早く至らむ 歩め黒駒
(巻7-1271)
右の一首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。
※行路:旅の道で。
遠くて、雲のかなたに見える愛しいあの娘の家ではあるけれど、少しでも早く着きたい。
だから、黒駒は早く歩きなさい。
遠く離れた妻の家に急ぐ夫の心を詠む。
遠いのだから、頼りにするのは、黒駒の脚力が第一。
妻問いの時間帯は、夕方。
そのため、夜陰に紛れる黒駒が愛用された。
また、古代の夜道は、現代のように明るい電燈などはなく、不安や危険もあった。
それもあって、黒駒にはしっかり速く進んで欲しい。
そんな願望も含まれている。




