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こもりくの 泊瀬の山に
物に寄せて思ひを発しき
こもりくの 泊瀬の山に 照る月は 満ち欠けすれそ 人の常なき
(巻7-1270)
こもりくの:泊瀬の山にかかる枕詞。
泊瀬の山:古代大和地方の葬送地。そのため霊魂のこもる聖地とされた。
泊瀬の山に照る月が満ち欠けするように、人も変わらずにはいられない。
泊瀬山は葬送地、それ故か古代から霊魂のこもる地とされていた。
その泊瀬山の上から下界を照らす月でさえ、満ち欠けがある。
ましてや人間である自分などは、その影響を受けるのが当たり前。
月を思い人に例えれば、その人が何等かの理由で見えたり、見えなかったりするのも当たり前。
男を待つ女の歌とも取れなくはない。
 




