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児らが手を 巻向山は
児らが手を 巻向山は 常にあれど 過ぎにし人に 行きまかめやも
(巻7-1268)
愛しい彼女の手をまくと言う巻向山は何も変わらないけれど、亡くなってしまった人を訪ねて、手枕をして眠るなど、もう出来ない。
巻向の 山辺とよみて 行く水の 水泡のごとし 世の人我は
(巻7-1269)
巻向山の山辺を鳴り響かせて流れて行く水泡のように、現世の私たちも流れて行く。
両方とも柿本朝臣人麻呂の歌集からとなっている。
おそらく、巻向山付近に住んでいた亡妻を偲んだのだと思う。
すでに手枕をして眠るなどの、温もりはありえない寂しさ。
そして、水泡のように流れ去っていく、人の世の儚さ。
どの歌も、人麻呂らしい、心を強く打つ秀歌。




