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ももしきの 大宮人の
所に就きて 思ひを発しき 旋頭歌
ももしきの 大宮人の 踏みし跡所 沖つ波 来寄せざりせば 失せざらましを
(巻7-1267)
※所に就きて 思ひを発しき:その土地や場所において、感慨を催して詠んだ歌。
※旋頭歌:五七七を繰り返した六句より成る歌。基本的には上三句と下三句が別人により唱和された。
※ももしき:大宮人にかかる枕詞。
この地は、かつては大宮人が踏み歩いた場所なのです。
沖の波が打ち寄せることがなかったら、その足跡も消え失せずに残っていたのでしょうが。
難波の浦、和歌の浦への、かつての行幸を懐かしむ歌、あるいは大津の都の盛時を懐かしむ歌か、様々な説がある。
いずれにせよ、華やかな時があり、今は空虚な状態。
その格差を詠う。
兼好氏の好んだ「枯れた美しさ」にも通じる深さを感じるのは、私だけだろうか。




