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時に臨みき(4)
黙あらじと 言のなぐさに 言ふことを 聞き知れらくは 悪しくはありけり
(巻7-1258)
黙っていることはできないと、気休めのつもりで言ってくる言葉を、そう理解しながら聞いているのは、本当に嫌なものなのです。
女性の立場から詠んだ歌らしい。
浮気をしてきた夫の言い訳、「いや、あの人とは本気ではないよ、たまたまだった、本当は貴方が好き」などと、あからさまに言い訳されても、聞いているほうは「はい、そうですか」と言っても、心は裏腹になり、気分が悪くて仕方がない。
光源氏の言い訳を聞き続ける紫の上も、こんな気分なのだと思う。




