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問答(1)
佐保川に 鳴くなる千鳥 何しかも 川原をしのひ いや川上る
(巻7-1251)
人こそは おほにも言はめ 我がここだ しのふ川原を 標結ふなゆめ
(巻7-1252)
右の二首は、鳥を詠みき
※問答:問歌と答歌を二人で唱和する形に詠んだ歌。
佐保川で鳴く千鳥 貴方は何故にそれほどに川原を慕い、川を上るのですか。
人々はつまらない景色と言いますけれど、私はこれほど慕う川原なのです。
決して標を張って、出入り禁止などなさらないように。
人間の問いに対して、鳥が答えている形となる。
ただ、そのままには取れない。
千鳥は、佐保川の上流あたりに住む女性に通う男性。
世間の噂では、その女性は美しくもない普通の女性。
それを何故に貴方は通うのですかとの質問。
しかし、その普通の女性であっても、好きになった男性は通うことを止められたくないから、標を張る(先に寝取る)などして、横取りするなとの意味も込めたかもしれない。




